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『スタートアップ経営者のための、知っておきたいお金の話』#3

こんにちは、萩口義治(はぎちゃん)です。

創業・スタートアップの経営者の支援に特化した会計事務所「はぎぐち公認会計士・税理士事務所」と「資金調達に強い」コンサルティング会社「株式会社HG&カンパニー」の経営をしております。

最近は月に6~10件もの融資案件を政策金融公庫と取り組んでおります。週に2,3回は、大手町の政策金融公庫に出入りしているのですが、先日行った際には、制作金融公庫の上席の方が、挨拶にきてくださり、政府系金融機関との信頼関係もますます強固になったと感じております。

創業経営者のために、「2.5%⇒1.0%」の低金利融資の調達を支援するなどして、私たちが掲げる「金(ゆとり)のある創業」の実現をより一層力強くサポートしていきたいと思います。

■今月のテーマ

さて前回は、「役員報酬、いくらにすればいいの!?」をお送りいたしましたが、第3回目となる今日のテーマは、「事業のボトルネック、経営者としての付き合い方」です。

創業ベンチャーの事業は、常にアンバランスです。最初は売上が不足しているため、営業に時間を割き売上を上げようとしますが、売上が上がってくると段々忙しくなってきて、今度は受注した業務をこなす時間が足りなくなってきます。

このように事業は、販売・業務リソース・生産力などいずれかの要素が「いっぱいいっぱい」になると、それ以上に大きくなることができなくなります。その「いっぱいいっぱい」になっている要素のことを「ボトルネック」といい、その時点その時点でのボトルネックを適切に解消していくことで、事業の成長を早め、成長を継続することができるようになります。

今回は、創業当初のボトルネックの変遷と、経営者はボトルネックとどうつきあうべきかについてお話したいと思います。

■ボトルネックは変遷する

 創業ベンチャーの最初のボトルネックは、「売上」が不足している場合がほとんどです。起業するとまずは、給料の代わりに自分の生活資金を稼がなくてはならず、そのためには売上を上げることが事業の最初の課題となります。

最初の課題なのですが、実は、多くの起業家が、この段階でストップしてしまうことが多いというのも事実です。まずは、この「売上」のボトルネックを突破して、自分一人もしくは創業メンバーでは回らないという所まで売上を計上できるかどうかが、創業ベンチャーの最初の試練です。

世の中の7割が赤字企業であると言われていたり、世の中に個人事業主が多いということも、ボトルネックが「売上」という段階から脱し切れていない会社が非常に多いということを物語っています。

そしてこれをクリアすると、今度は業務面でのリソースがボトルネックとなったり、規模の大きな受注に対応するための資金がボトルネックとなったりします。

私は「起業」と「経営」を明確に区別しています。事業のボトルネックが「売上」から「業務リソース」へと移り、人材を(ちゃんとした給料を払って)雇用しはじめたときが、起業家から経営者になる時だと考えています。

ボトルネックは事業モデルによって、様々な順番で発生します。例えば、初期費用が多額にかかる場合や、ITベンチャーのようにローンチまでの開発費用がかさむ場合には、「資金」が最初のボトルネックになる場合もよくあります。

製造業では、商品がヒットすると、生産能力がボトルネックとなることもあります。売れない製品は、ずっと営業面がボトルネックなのに、ヒットすると急に生産能力がボトルネックとなります。しかし、製造業の場合には、一時的なブームのために工場を増設したところで、工場が出来あがるころにはそのブームが去っているということも重々あり得ます。このボトルネックについては、生産能力の増設によって解消するというよりも、外注によって対応する方がよいのかもしれません。

ボトルネックをどのような方法でクリアするのか、またはクリアしなくても待っていれば解消する問題なのか、ここは経営者の見極めだと思います。

■創業経営者がハマるボトルネックの罠

創業経営者がボトルネックにハマる場合、以下の2つのケースがあります。

①気付いているのに、解消できないケース
②気付いていないケース

それぞれ、どのように解消すべきか、以下に記載します。

 

①気付いているのに、解消できないケース

私も多くの創業経営者を拝見しておりますが、特に、創業経営者があるボトルネックを解消できない状況が長く続く場合というのは、一つの傾向があるように感じます。それは、思ってはいるけど、そのボトルネックの解消ために、「時間」と「お金」を使うことができないということです。忙しい忙しいといいながら、それが解消できないでいる経営者は、人を採用するために時間やお金を使っていないことが多いです。

でもこの経営者が怠慢なのではありません。売上がそこそこ上がってきている段階では、一人経営者はとっても忙しいのです。日々、忙しく営業と業務をこなしていくだけで精いっぱいで、「人材の採用」という新しいことのために使える時間がほとんどないのです。サボっている覚えなど、全くないのです。

そこで必要なことは、売上が下がってもいいから、人材採用に「時間」と「お金」を使うということです。

一人で売上の限界に挑戦する「起業家」から、従業員の力を借りて売上を増額していく「経営者」になるためには、自分の時間の使い方を変えなくてはなりません。自分が業務をして売上を上げるということに使う時間を減らして、人材の採用に時間を使うのです。

「起業家」⇒「経営者」になるということは、「生まれ変わる」とか、「進化する」とか、意外と大きな発想の転換が必要になります。

一人の経営者が「人を雇う」ということは、目先、コストが増え、業務効率が落ち、売上が落ちるということなのです。ただし、これに時間が使えなければ、あなたは、ずっと一人経営者のままです。

変わろうとするよりも、これまでやってきた方法で自分の目の前にある売上を上げるために、(忙しい忙しいと言いながら)業務に時間を使うことの方がよっぽど簡単で、易き道であるということを自覚してください。

②気付いていないケース

売上が上がってきて、業務もそれなりバランスよく回りだすと、「うちにボトルネックはない」と思ってしまうケースがあります。確かに、今の売上があって、今の従業員がいてうまくいっていれば、不満はないかもしれません。

そんな時は、自分にこう問いかけてみてください。「俺は、ここで満足していていいのか。」と。

例えば、「今より売上を10倍にするにはどうしたらよいのか?」とか、「シェアNo.1の●●社を超えるにはどうしたらよいのか?」などと考えてみてください。まだまだすべきことが見つかりませんか?

私は、経営者がどこを目指しているのかによって、自覚できるボトルネックは変わってくると思っております。より高みを目指すとき、ボトルネックは必ずまた出てきます。ご安心ください(笑)

■弊社のボトルネック(余談)

創業から2年弱が過ぎましたが、おかげさまで顧問先も50社を超えて参りました。思えば、創業当初は、売上ゼロの状況から、とにかく売上を上げることに全力を注いできました。

顧問先が増えるにしたがって人を雇わなければと思っていましたが、売上の方は様々な方々からのご紹介や、HPからの問い合わせなど集客の仕組化がかなり進んできたため、放っておくと、日ごろの業務と新規案件の商談に時間を奪われ、人材の採用に「時間」と「お金」を使うことができませんでした。

しかしそのツケもあり、現在は完全に「業務リソース」の拡充の必要性が高くなっており、弊社のボトルネックとなっております。

具体的には、会計事務所事業の人材としてあと2名の採用と、それに伴い事務所のキャパシティが、現在の弊社のボトルネックとなっております。現在、人材採用と、事務所探しに奔走しております。まさに、本日の内容は、自戒の念が込められたものです。

「創業・スタートアップの経営者の事業を成功に導く」「めざせ、金(ゆとり)のある創業」そんなビジョンを掲げる会計事務所のメンバーとして、いままでになかった会計事務所の姿を共に模索していける同志を募集しております。我こそはと思われる方、心当たりの知り合いがいる方は、是非、こちらからお問い合わせください。

■次回予告

次回は、「融資と、金融機関との信頼関係構築」についてお送りいたします。

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『スタートアップ経営者のための、知っておきたいお金の話』#2

こんにちは、萩口義治(はぎちゃん)です。
創業・スタートアップの経営者の支援に特化した会計事務所「はぎぐち公認会計士・

税理士事務所」と「資金調達に強い」コンサルティング会社
「株式会社HG&カンパニー」の経営をしております。

10月25日(土)には、下記のイベントに出店させていただきます。
http://www.k-society.com/seminar/

ABSの「ベンチャー事業創造講座」の講師で、BBT大学の教授でもある
松本孝利先生のお話も聞くことができます。

さて前回(第1回)は、「税金を払わないと会社は大きくなりません」
お送りいたしましたが、この内容は、多くの税理士があまり言わないことのようで、
経営者の方々から多くの反響を頂いただきました。

見逃してしまった方は、ぜひこのブログ内で改めてご覧になってみてください。

■今月のテーマ
さて第2回目のテーマは、「役員報酬、いくらにすればいい!?」です。

役員報酬は、経営の意思決定権者の報酬なので、利益操作を防止するために
従業員給料よりも厳しい決まりがあります。
また、役員報酬の金額設定については、どのようなことを考慮するべきなのでしょうか。
実際には、業計画・所得税・法人税・社会保険など様々な要素を考慮せねばなりません。

■役員報酬の決まり
役員は、会社の経営を実行する立場であり、自身の報酬の決定に
影響を与えることのできる存在です。

そこで役員の報酬を自由に変更できることを認めてしまうと、
決算期末に役員が自らの役員報酬を調節することで、利益調整ができてしまいます。

そのため、法人税法では役員報酬について、
これを経費計上するための条件を設けています。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5209.htm

①定期同額給与
定期同額給与として認められるためには、会社は、事業年度開始から3か月以内に
役員報酬の金額を決定し、毎月同額を1年間払い続けなくてはならないとされています。

②事前確定届出給与
いつ(月日)、誰に(役員名)、いくら払う(金額)という内容の届出を事前に提出し、
当該日にその金額を支払うものです。届出の金額から、
1円たりとも増減すると経費として認められなくなります。

③利益連動給与
有価証券報告書を作成しているような非常に大きな会社のみに
適用される規定なので省略しますが、こちらも事前に利益と
役員報酬との比率などを決定して、公表することが条件とされています。

このように役員報酬は、いずれにしても決算日に近くなり利益が
予想できるようになるよりも前に決定する必要があるのです。

■役員報酬の月額によって、税金や社会保険の金額は異なってくる
役員報酬を決めるときには、まず、当期の事業計画を想定します。
役員報酬をゼロとした場合に、会社にはいくらの税引前利益が残るのかをまず、予測します。
その金額を、役員報酬と会社の利益に分配すると考えてください。
(赤字予測の場合など、各役員の生活費などの最低ラインなどは、考慮しなくてはなりませんが。)

役員報酬は、役員の個人の所得税、会社の法人税の双方に影響します。
また、社会保険の金額にも影響します。

仮に、役員報酬考慮前の税引前利益が2,400万円であったときに、
役員報酬を月額いくらにするかによって役員の個人の所得税、会社の法人税、
社会保険がいくらになるのかについて、シミュレーションしてみた結果が以下です。

第2回

上の表からお伝えしたいのは、役員報酬をいくらにするかによって、
税金額や社会保険の金額が変わってくるということです。

役員報酬考慮前の税引前利益が2,400万円の前提においては、
上記の4案の中では役員報酬月額を100万円にするのが最も、
トータルの税金と社保の支払い(①②③の合計額)が小さくなります。

社長一人の会社で、株主も社長100%の会社だとすると、表上の①②③はすべて
最終的には社長に帰属する負担ですから、社長に残る金額が変わってくることになります。

予想される利益をどれだけ会社に利益を残し、どれだけ役員個人に支払うのかによって、
金額に差が出てくるということです。

当シミュレーションは、厳密には他にも諸々の条件を考慮することになりますので、
個々の事象ごとに税理士に相談していただくことをお勧めします。

■事業計画の予測が困難な時
“役員報酬のシミュレーションは事業計画が前提になる”とお話しましたが、
何しろ役員報酬は事業年度開始後3か月以内には、将来1年分を決定しなくてはなりませんから、
そうそう正確にシミュレーションすること自体が難しいといえます。
(利益操作防止の趣旨ですので、当然ですが)

特に創業期は、設立から3か月の時点で、その期の事業計画を正確に予測するのは
非常に困難です。
そんな時は、定期同額給与と事前確定届出給与の併用を考慮してもよいかもしれません。

定期同額は一定の抑えめの金額にしたうえで、事前確定届出を決算近くの日付にして、
決算期末のひと月前までに利益目標●●円を達成していたら、
事前確定届出給与を支払うというような使い方です。

事前確定届出給与は、日付と金額を事前に届け出てその通りに支払えば経費計上できますが、
支払わなければそれはそれでそもそも経費計上していないので、
その経費性が問題になることはないのです。

事前確定届出給与は、金額を増減することはできませんが、
後々、払うか払わないかの選択だけは将来に残すことできるのです。

■次回予告
次回の内容は、まだ未定ですが、みなさんにお役立ていただける情報を
お届けしていきたいと思いますのでどうぞお楽しみに!

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『スタートアップ経営者のための、知っておきたいお金の話』#1

こんにちは、萩口義治(はぎちゃん)です。
創業・スタートアップの経営者の支援に特化した会計事務所「はぎぐち公認会計士・
税理士事務所」と「資金調達に強い」コンサルティング会社
「株式会社HG&カンパニー」の経営をしております。

最近は、今の税理士が資金調達の相談に乗ってくれないという方々からの相談が
急激に増えておりまして、業務の方をしっかりと回していくのが課題となっております。

早急に人員を2名から4名に増員し、12月には事務所の移転も予定しております。

さて前回まで12回にわたり、「起業における、賢い資金調達術!」というテーマで
お話をしてまいりました。

今回からは、題名を「スタートアップ経営者のための、知っておきたいお金の話」
といたしまして、税金・資金・会計・財務のことなど、経営にまつわる様々な
お金の話をしていきたいと思います。

■今月のテーマ
まずしばらくは、気になる『会社の税金』についてのお話をさせて頂く予定でおります。
第1回の今回は、「税金を払わないと会社は大きくなれない」をお送りいたします。

税金を払うことにネガティブであったり、いかに節税するかということが重要である
と言われることも多々あるでしょう。
確かに、会社にお金をいかに残すかということは、とても重要なことです。

しかし一方で、まずはこの大原則「税金を払わないと会社は大きくなれない」
ご理解いただくことで、現在講じている節税対策が適切なものかどうか、
今一度振り返っていただければと思います。
長期的に利益を出さない節税体質は本当に会社のためになるのか、
これから起業する方にとっても、この内容が頭の片隅にあれば、
長期的な成長を阻害する間違った節税をしなくて済むかと思います。

■よくある節税対策
(簡略化のため、利益=課税所得、法人税率40%として記述します。)

会社の利益(課税所得)には、法人税が課税されます。
以下のPL(損益計算書)を見てください。40の税引前利益を稼いでも、
その40%である16は納税で支払うことになるため、24しか利益は残りません。

【節税対策を行わなかった場合のPL】

①

この納税を低減するために、「節税対策」として、適法の範囲で施策が
講じられることがあります。
具体的には、生命保険・各種共済などを使った節税対策をしたとします。

【節税対策を行った場合のPL】

②

■節税することの功罪
①節税対策の効果として、利益はゼロになり、その結果、納税金額もゼロとなっています。
更に、節税対策として講じた(例えば)生命保険自体の効果(あるリスクに対する補償)も
当然享受できるようになっています。

②16の税金を節約するのに、40の支出を要しています。
これはそもそも有効な支出であればよいのですが、節約した税金以上の支出により、
現金が減少している。これが浪費だったり効果の薄い支出であったとすれば、
節税のための節税に貴重な会社財産が減少しており、本末転倒となっていることになります。

③BS(貸借対照表)上の蓄積がなされない。
税金を支払った後に残る当期純利益というのは、BS上の純資産の部に
「利益剰余金」として計上されます。これは、返済不要の内部留保となり、
会社の財務状態が改善したと評価できる結果となります。
PLは期ごとの損益状況を表すものであるのに対して、BSにはそれまでの蓄積が計上され
企業の財政状態を表します。毎年税金を支払いながら利益剰余金に残してきた金額こそが、
会社の純資産を手厚くし財政状態を改善させるのです。

●節税対策を行わなかった場合のBS             ●節税対策を行った場合のBS

③

■税金を払わないと会社は大きくなれない
確かに目先において、せっかく稼いだ利益の40%ほどを納税することに
多少抵抗があるかもしれません。
しかし、だからといって、節税のためだからと言って浪費をしては会社の成長を阻害しますし、
会社の利益の蓄積を示すBS上の純資産額は大きくなりません。
(もちろん、生命保険や各種共済などは節税効果以外にも重要な有効性を有しており、
それが会社の経営上必要な場合は多々あります。)

銀行や投資家が純資産や利益剰余金の金額を見るのは、短期的な業績だけでなく、
企業の利益の蓄積や経営者の長期的な経営スタンスを見るためです。
この部分は短期的には調整できない指標として、会社の信頼や実績を
端的に表す指標になります。
純資産や利益剰余金を積み上げるには、法人税等を支払いながら、
税引後の利益を計上していくしかないのです。

無駄な税金を支払う必要はないし、会社にとって必要な節税対策は大いに有効ですが、
節税に腐心して会社の成長を遅らせることのないようにしたいですね。

■次回予告
ということで、2クール目に突入した私の連載。
少しでも皆様のお役に立てるものにしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

次回は、「役員報酬、いくらにすればいい!?」をお送りいたします。

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『起業における、賢い資金調達術!』#12

こんにちは、萩口義治(はぎちゃん)です。
創業・スタートアップの経営者の支援に特化した会計事務所
「はぎぐち公認会計士・税理士事務所」と「資金調達に強い」コンサルティング会社
「株式会社HG&カンパニー」http://hgand.co.jp/の経営をしております。

さて前回
「知らないと損するアベノミクスの創業融資制度 & 創業融資獲得のコツ」
というテーマでお話をいたしました。

■今月のテーマ
さて今回はいよいよ、「創業時の資金調達~まとめ」をお送りいたします。
これまで、1年にわたり続けてきました内容の総集編ということになります。

■Money is Time
事業は、資金がなくなったときに終わります。
お金があれば、事業は続けられます。
そして、お金を増やすのは、①事業売上による利益、②自己資金の投入、
③外部からの調達です。
創業当初から①はそこまで思うように出ないこともありますし、
②についても限界があります。そこで、①②の資金が不足した場合にも、
事業が終わらないようにするためには③が必要となります。

この③について、1年間、このメルマガで書かせて頂きました。

■資金調達の種類
創業時の資金調達として、①融資、②出資、③リース、④補助金・助成金
というものがあります。

①融資
金利と元本返済が必要な資金調達です。創業時は、「日本政策金融公庫」か
「信用保証協会」を通した融資のどちらかになります。
そして、どこから借りるのか判断する際に、考慮するべきなのは、「金利」だけではなくて、
「融資決定・入金までの期間」も重要な要素であるということを述べてきました。

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②出資
返済不要という創業にとって非常に魅力的な条件がある一方で、会社の所有権や
経営権の一部を握られてしまうという出資については、非常に慎重に検討する必要があります。
出資者には、色々なケースがありますが、共同経営者が共同出資で事業を起こす場合には
多くの場合は仲違いとなることが多いために、出資比率は50:50ではなくて少なくとも
51:49とする方がよいと私は勧めています。
また、機関投資家からの調達については、相手は出資によってお金を増やすビジネスで
プロであることを考慮し、投資契約の詳細な条件をしっかり確認したうえで、
出資を受け入れることが必要です。
資本政策に精通した公認会計士などの専門家に相談することも、
事の重大さを考慮すれば必要かもしれません。

③リース
設備投資に限定ですが、「リース」もご紹介しました。融資でいう「金利」にあたる
「リース料率」は融資と比較して高いのであくまで融資を第一に考えた方がよいですが、
融資枠に限度がある場合や、融資が受けられなかった場合の選択肢として、
「リース」という資金調達を知っておくとよいかと思います。

④補助金・助成金
また、「創業補助金」「ものづくり補助金」などの補助金・助成金については、
国から補助や助成ですので、受けられれば非常に有利な資金となりますが、
難易度が高く、書類や手続き上の手間もかかります。
また、本日平成26年8月23日現在では2つとも募集が終了しており、
募集期間が通常短いということも特徴です。他にも多くの補助金や助成金がありますが、
まずはこれらに対する情報収集をいかにできるか、そのような情報を届けてくれる
サイトや獲得を支援してくれる専門家と出会えれば、国から事業資金を調達できる
チャンスも広がります。

最近では、これに加えて、「⑤クラウドファンディング」という
資金調達方法が加わりそうな勢いです。
クラウドファンディングとは、ウィキペディアによると、
「不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や
協力などを行うことを指す、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語」
のことをいいますが、これまでの資金提供者である融資者・出資者とは性質が違い、
より感情面や社会的意義にお金を出してくれる資金提供者ともいうことができ、
また一つ違った選択肢になるのではないかと考えています。

世界では、日本よりも先にクラウドファンディングが発達しており、
私もこれから勉強していかなくてはと感じております。

■融資か出資か
これらの資金調達の中で、中心となるのは、①融資、②出資です。
金利と元本返済が必要な融資と、返済不要だけど会社の所有権や
経営権を与えてしまう出資の話をしました。

自分の事業は、「融資」「出資」のどちらで資金を調達するのがよいのか。
起業家はこの判断を誤ってはなりません。この判断によっては、
起業家の人生が大きく異なってくることになります。
それを判断するために考慮すべきは「収益性」と「リスク」の2点です。

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これを意識していないと、リスクの高い事業を融資で行ってしまい、事業が上手くいかずに、

倒産後に債務だけが残ってしまう場合もあります。
成功確率が高い事業なのに、出資を募って、多くのシェアを他人に奪われてしまったり、
会社をのっとられる場合もあります。

事業の成功が確証されているということは皆無ですし、事業家が失敗するリスクを
どこまで客観的に見れるかということもありますが、財務的な考え方として
覚えておいて頂きたいと思います。

■創業融資を受けるコツ
出資については、多くの出資者がおり、コツというものを一概に述べることはできませんが、
融資についてはある程度述べることができます。融資を受けるコツは、

① 「自己資金」と「経歴」
金融機関は、創業融資では経営者が描く「未来」はさほど重視しません。
金融機関が見るのは「過去」です。まだ実績のない創業者にとっての「過去」というのは、
ずばり「自己資金」と「経歴」です。自己資金が多い方が当然よいですし、
これから始める事業の経験がある方が有利となります。

② 申し込みのタイミング
創業して半年経って、売上が月10万円…。となるよりは、創業してすぐに借りに行く方が
結果的に借りやすいです。よい実績が出てから融資を受けるのが一番ですが、悪い実績が出てから
というよりは、何の実績もない時点で、借りに行くというのが一つのコツです。
また、年度では赤字であっても、単月黒字が2か月続いた時点で申し込むなど、
融資申し込みのタイミングが思った以上に結果を左右します。

③ 融資に強い公認会計士・税理士に依頼する
また、実績のない創業者ですから、公認会計士・税理士が事業計画作成を支援しているとか、
交渉の際に同行しているというのは、銀行の信頼性が増すことは間違いありません。
実際に、日本政策金融公庫の融資が通らなかった経営者の融資を私が手掛けて
通したケースも少なくありません。
また、税理士を弊社に変えて頂く経営者の方々の声をきいていると、
前の税理士は資金調達についてはほとんど支援してくれなかったという方が非常に多いです。
創業経営者にとっての最初の専門家である「税理士」が、経理や税務申告書だけを
作ってくれるのか、資金調達などについても相談できるのか、の差は非常に大きいと感じています。
そのような声にお応えできるよう、日々、精進を続けて参りたいと思っております。

■次回予告
このメルマガも、おかげさまで1周年となりました。皆さまのご愛顧に感謝いたします。
このメルマガを書かせて頂く中で、「東京都の創業補助金」獲得支援数が都内の税理士で
1位になったり(平成26年4月発表分)、アタッカーズビジネススクールで2回目のセミナーを
開催させて頂いたり、他でも「創業時の資金調達セミナー」を開催させて頂いたりしながら、
私自身が成長させて頂いた気がします。

そしてこのメルマガは、来月以降も、執筆を継続させて頂くこととなりましたので、
益々読者のお役にたてるよう、精進を続けて参りたいと思います。
それでは、新シリーズに乞うご期待!

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『絶対に後回しにしてはいけない!知的財産権の話』#12

こんにちは、弁理士の服部耕市です。
いよいよ最終回の今回は、「意匠権」についてお話ししたいと思います。

(1)意匠
「意匠」を保護するのが「意匠権」です。
「意匠」って何かご存知でしょうか。

馴染みのある言葉を使って分かり易く言うと、
「意匠」とは「物品のデザイン」のことです。

例えば、
・携帯電話(物品)の未来的なデザイン、
・靴(物品)のオシャレなデザイン、
・ボールペン(物品)の握りやすいデザイン、
等です。

ここで、「意匠」について、誤解が多いと感じていることを、2つ。

① 物品性
「意匠」は「物品のデザイン」ですから、物品という概念を切り離せません。
例えば、可愛いキャラクターを創作しても、そのキャラクター自体を
意匠権で保護することはできません。
物品と結びつかなければ「意匠」に該当しないからです。
ただし、コップにそのキャラクターがデザインされている場合は、
コップ(物品)のデザインとして意匠権で保護可能です。

② オシャレさは必要ありません
普通、「デザイン」というと、オシャレで格好良いものを連想しますね。
そのため、オシャレで格好良くなければ、意匠権を取れないように
誤解されることもあるようです。
しかし、そんなことはありません。
オシャレか否かは意匠登録の要件になっていませんし、
そもそも、そんな趣味性の高い曖昧な判断を特許庁審査官が
一定の基準に従ってするのムリですよね。
ご自分でハードルを上げて、勝手にダメと決めつけないようにして下さい。

(2)意匠権取得までの流れ
意匠権を取るためには、特許庁に対して意匠登録出願をする必要があります。

その手続きは、以下の順番で進みます。
① 意匠登録出願
② 審査
③ 審査結果に対する対応

これらのうち、①と③は出願人が行う手続きです。
また、②と③は、審査官が意匠登録すべきと判断した場合と、
意匠登録すべきでないと判断した場合とで内容が異なります。

①  意匠登録出願
意匠登録出願では、保護を求める「意匠」をその「物品面」と
「デザイン面」の両面から特定する必要があります。
「物品面」からの特定は、願書に物品名を記載することで行います。
「デザイン面」からの特定は、図面や写真等を使用して行います。

1件の出願に含めることができる意匠の数は、1つです。
1つの意匠毎に出願を行う必要があります。

② 審査
特許庁の審査官が審査を行います。
審査では、法律で定められた登録要件(意匠法第3条、第5条等)を
満たしているか否か判断されます。
例えば、出願された意匠が工業的に量産できないものの場合には、
意匠登録を受けることはできません(意匠法第3条第1項柱書)。

審査官の最終的な判断結果は、「査定」というかたちで為されます。
「査定」には、(i)登録査定と(ii)拒絶査定の2種類あります。
これは、商標権や特許権の場合と同じです。

(i) 登録査定
出願が登録要件を全て満たしていれば、審査官は意匠登録をすべき旨の
査定をします。
おめでとうございます!

(ii) 拒絶査定
一方、出願が登録要件を満たしていない場合には、まず最初にその理由が
通知され(拒絶理由通知)、意見書や補正書を提出する機会が与えられます。
つまり、いきなりダメと結論づけられるのではなく、
その前に反論する機会が確保されています。

拒絶理由通知を受け取った出願人は、意見書を提出して、
審査官の判断に対して反論することができます。
また、補正書を提出して記載を訂正することも可能です。

特許庁審査官は、提出された意見書や補正書を読み、再度審査を行います。
そして、拒絶理由が解消された場合には、(i)登録査定を行います。
一方、拒絶理由が解消されていない場合には、(ii)拒絶査定を行います。

なお、拒絶理由通知が複数回行われる場合もあります。

②  審査結果に対する対応
上記②で(i)登録査定の場合には、特許庁に登録料を支払うことで、
特許庁の登録原簿に登録され(設定登録)、意匠権が発生します。

一方、上記②で(ii)拒絶査定の場合には、次の(a)と(b)の2つの選択肢があります。

(a) 諦めない
審査官の判断に納得できない場合には、拒絶査定不服審判を請求して争うことができます。
審査官は1人で審査を行っていました。
拒絶査定不服審判では、3人又は5人の審判官の合議体が審理を行います。
判断の主体が変わりますので、審査官とは異なる判断結果が出る可能性もあり、登録を勝ち取ることも可能です。
ただし、拒絶査定不服審判を請求するには、審判請求料を支払う必要があります。

(b) 諦める
審査官の判断に承服する場合、以降の手続きを行わないことで、
その後の費用発生を防ぐことができます。

(3)意匠権の存続期間
意匠権は、設定登録の日から20年間存続することができます。
ここで、「設定登録」とは、上記(2)③の設定登録です。
設定登録により意匠権が発生しますので、別の言い方をすると、
意匠権の発生した日から20年です。

なお、特許権の場合は、「出願の日」から20年でした。
この「出願の日」から20年には、審査請求前の期間や特許庁審査官による
審査期間も含まれます。これらの期間が長引き、特許権の発生が遅れれば、
その分だけ特許権が発生している期間は短くなります。

これに対し、意匠権の場合は「設定登録の日」から20年間ですので、
審査期間の長短には影響されません。

(4)意匠の調査
日本の特許庁のホームページには、「特許電子図書館(IPDL)」という
データベースがあり、誰でも無料で使用することができます。
IPDLについては、連載の第5回:商標調査、第10回:特許調査でも
紹介いたしました。
今回は、具体的な使用方法についてはお話しいたしませんが、
IPDLは意匠調査も行うことができます。
機会がありましたら、ぜひ、利用して下さい。

最後に、知的財産権について大切なことを1つ。

困ったときには、手遅れになる前に、お近くの弁理士にご相談下さい。
知財関係の手続には、期限が決められているものが多々あります。
期限経過後は、手続が出来なくなります。
手遅れになる前に、行動しましょう!

日本弁理士会では無料相談を行っていますので、
まずはこちらの利用もオススメです。

皆様、1年間、お付き合いいただきまして、どうもありがとうございました。
少しでも皆様のお役に立てば嬉しいです。

また、今回の連載を踏まえると共に更に新情報を追加した
知財セミナーを企画しております
(アタッカーズ・ビジネススクール主催、日程未定)。

詳細がきまりましたら、アタッカーズ・ビジネススクール事務局から
お知らせすることになると思いますので、こちらにもぜひ
ご参加いただければ幸いです。

その際、みなさまにお会いできることを楽しみにしています。
どうもありがとうございました。

                                     服部 耕市